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コト オト ログ

音楽のこととか、それ以外とか。自分へのログ的な感じで。

映画「スティーブ・ジョブズ」

司馬遼太郎さんが乃木希典を主人公とした『殉死』を
書かれた際、「生乾きの歴史」を書くことの難しさ、
ー実在した主人公と面識のある人がまだ存在していること等ー、
に触れて、

「死後100年を経ないと、ちゃんとした評価ができない」

というようなことを、あとがきかエッセイに書かれてた。


またポール・マッカートニーさんがrockin'onのインタビューの中で、
ジョン・レノンの幼少期を描いた映画「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」の
監督サム・テイラー=ウッドとジョン・レノンの幼少期について話したやり取り、

ジョン・レノンの叔母、ミミおばさんについて、ポールが実際に接したミミおばさんの印象と映画で描かれたミミおばさんの様子に乖離があること、
またそのことを指摘すると「でも、こっちのほうがいいから」と言われたことに
対して、)
「いいかいサム、念のために確認しておくけど、これはあくまでも映画の中の
ストーリーだから。これは実際に起きたことじゃないし、あくまでも映画だからね。
事実じゃなくて、あくまでも事実を基に作られた映画だからね」
                     〜rockin'on 2013年12月号より〜



映画「スティーブ・ジョブズ」(原題「JOBS」)を見て、この司馬遼太郎さんが
言われてた、またポール・マッカートニーさんがサムさんに指摘された、
この2つのことを思い出した。というよりも、見てる最中からその2つのことが
頭に浮かび続けていた。

映画でのやり取りはスティーブ・ジョブズについて書かれている本や自伝、
そしてスティーブ・ウォズニアックさんの自伝「アップルを創った怪物」で
描かれた内容を見ていると、人物像に違和感を感じずにはいられなかった。

映画としては、登場人物に味付けが必要になることはある。けれども、
味付けされた人間(特にウォズさん)はまだ実在していて、そのキャラクターも
インタビューや書籍から伝わっている。

そこのギャップから生まれた気持ち悪さが予想以上にあり、
ジョブズさんの死去から2年、本当にまだまだ歴史が生乾きな状態で
作られたものの弊害であるように思った。


じゃあ、アップル周りの人物について、それほど知らない人が観たら
どうか、登場人物のことを一旦脇に置いて、ストーリーや構成に目を向けると
どうか。

過程が大切なところが結果だけ描かれていたり、
過程を描いて導かれたのがその結果なのかという点があったり、
映画だけを見ても何がなんなのか分からないまま終わるんじゃないかと
思う作りだったように思う。


不思議に思ったことから2点だけ抜粋すると
(*以下、少し映画の内容的なことを書いてます。)、

1.なぜスティーブ・ジョブズが戻ってきて、アップルが
  復調したのか分からない。

中盤以降の流れは「AppleⅡがヒット→ジョブズがリサにこだわって
赤字垂れ流し→マッキントッシュプロジェクトにも莫大なお金が→
ペイするためにジョン・スカリーが値上げ→売れない→責任のなすりつけ合い
ジョブズ敗北、アップル立ち去る→(その後大幅に端折られて)→どのCEOでも
アップルの業績を回復させられず→ジョブズのNeXTに白羽の矢→
ジョナサン・アイヴとの出会い→返り咲き→取締役会を自分の思う通りの面々に
→(アイヴに)「デザイン大事」→2012年アップルは時価総額で世界一に」

 
ジョナサン・アイヴを大切にして取締役会を自分の思うように
換えたら、目覚しい復活を遂げましたよ的にまとまっている感じで、
アップル追放される前後でのジョブズ自身の変化、成長が何も書かれて
いない。

この書き方だったら、ジョブズの追放劇が間違ってただけのような・・・。

2.〆が「2012年アップルは時価総額で世界一に」
中盤以降は株価のこと、経営状態のことが盛んに出ていたけど、
「2012年アップルは時価総額で世界一に」って、そこを「スティーブ・ジョブズ」を
主題にした映画の〆とするのかと。

ただ映画を見てると途中から、こういうことになってもおかしくない
だろうなぁとある種覚悟は出来てた。

それ以外にも色々ツッコミどころはあるものの、ジョブズさんのエピソードを
適当に切り貼りして、無理矢理だったり、映画的に流れができるように繋げて、
繋げていく内に時間が足りなくなって肝心なところを(中略)としてるんだろうなぁと
いう感じ。



この映画はどこに、誰に向けて、何を伝えたかったのか。

それがハッキリしない状態で、生乾きの歴史を映画的に取り繕うために
アレコレ弄って正体不明のものが出来た。

そんな感じじゃないかなぁと思いました。

アシュトン・カッチャーは確かにスゴく似てた、けど。